急激に進む円安ドル高、1ドル160円を超えたところで大きな動きがあり日銀の為替介入があったかもしれません

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急激に進む円安ドル高本日(2024年4月29日)10時ころ、1ドル160円を超える円安になりました。日本では祝日だったこともありますが、世界は月曜日という単なる平日です。大きな変動があった時間帯からしてシンガポールか香港か、アジア市場での大きな取引があったのでしょうね。
急激に進んでいる円安に日銀が為替介入したのではないかとも言われています。その後の為替相場は156円/ドルの水準で推移しています。

円安について考えてみる

円安とはなにか?

円安とは、簡単に言えば日本のお金「円」の価値が下がることです。円安が進むと、外国の商品やサービスを購入する際に、より多くの円が必要になります。例えば、アメリカからの輸入品を買う際、円の価値が下がると同じ商品でもより多くの円を支払わなければならなくなります。

仮に、アメリカで1ドルのコーラを輸入したとします。1ドル100円時代に100円で買えたコーラは、1ドル200円時代になると同じコーラなのに200円に値上がりしたように見えます。これはコーラが値上がりしたのではなく、「円がドルに対して安くなった」ということです。

円安が進む主な理由は以下の三つです。

  1. 日本企業の海外進出: 日本の会社が海外に工場を作ると、その国のお金(例えばドル)が必要です。そのため、円を売ってドルを買う必要があります。このような企業の行動が持続的に増加していくと、円の価値が下がります。
  2. 貿易構造の変化: 日本は以前、車や電子機器などを作って海外に売ることでたくさんの外国のお金を得ていました。しかし、今はその多くの生産が海外で行われているため、日本が得る外貨が減っています。
    また、日本は石油や食料などを海外から多く輸入しているため、これらの価格が上がると、より多くの円を使って購入する必要があります。さらに、日本ではデジタルサービスの消費が増えていますがこれらはほとんどアメリカのサービスなので日本はほぼ一方的に買う構造なので、円が安くなっていきます。
  3. 金利の差異: 日本では金利が非常に低いのに対し、アメリカでは金利が比較的高いです。投資家は利益を求めて、より高い金利を提供するアメリカに資金を移動させます。これにより、円を売ってドルを買う動きが強まり、円の価値が下がるのです。

デジタル敗戦

「デジタル敗戦」という表現は、日本がデジタル分野で他国に後れを取っている状況を指し、特にアメリカの巨大IT企業に依存していることから使われています。

以下に、その背景と現状について説明します。

デジタルサービスの輸入が増加

アメリカの巨大IT企業、例えばGoogle、Apple、Microsoftなどが提供するサービス(検索エンジン、クラウドサービス、オンラインストア、SNSなど)は、世界中で広く利用されています。これらのサービスは、日本国内でも非常に人気があり、多くの日本人が日常的に利用しています。
これらのITサービスはドル建ての決済ばかりなので、円安が進むたびに高くなっていきます。

貿易収支への影響

これらのサービスを利用する際、日本はサービスの対価として米国企業に支払いを行います。支払いは円ではなく、ドルやその他の外貨で行われるため、日本は大量の円を売って外貨を購入します。これが日本の貿易収支に影響を及ぼし、さらに円安を促進する一因となります。
すでにデジタル消費の貿易収支は数兆円に達しており、海外からの観光客増加で増えているというインバウンド消費よりも多いです。

日本のデジタル産業の遅れ

日本自身が同等のデジタルサービスを提供する企業や技術を十分に持っていないため、外国の企業に依存せざるを得ません。この結果、日本国内で稼ぐことができる利益が海外へ流出してしまうという構造になっています。
また、優秀な日本のエンジニアが海外に流出してしまうことで、負のループに陥っています。

経済的な損失と国際的な競争力の低下

大量の資金が海外に流出することで、日本の経済的な損失が拡大し、国際競争力の低下にもつながります。
特にデジタル分野の技術革新が進む現在、このような状況は「デジタル敗戦」と言われるに至る大きな原因です。

円安に対応するためにはどうすればいいか

これらの問題に対処するために日本はいくつかの対策を考える必要があります。

例えば

  • 産業競争力の強化:日本の製品が他国と競争できるように、技術革新や効率化を進めることが重要です。
  • サービス収支の改善:デジタル産業など新しい分野での競争力を強化し、国内で利益を生み出せるようにすること。
  • 金融政策の見直し:必要に応じて金利を調整し、資金の流出を抑制することも考えられます。

円安は一見すると外国製品の購入が困難になるなどのデメリットがありますが、外国から日本への投資が増えたり、インバウンドなど日本の観光業が盛り上がるなどの利点もあります。

円安問題はバランス良く対応することが求められています。

為替介入とはどんなしくみなのか

為替介入とは、政府や中央銀行が為替市場に直接介入して、国内通貨の交換レートを意図的に影響させる行動を指します。主に以下のような目的で実施されます。

  1. 過度の通貨の変動を抑制:急激な通貨価値の上昇や下落を防ぐため。
  2. 経済的安定を維持:輸出入企業の事業計画の安定や、インフレ率のコントロールを通じて。
  3. 投機的な動きに対抗:短期的な資金の流入や流出が引き起こす不安定な市場状況に対処するため。

日本における為替介入の意思決定と実施は、政府と日本銀行(日銀)の間で協調して行われますが、役割は明確に分けられています。

  1. 意思決定為替介入の意思決定は主に日本政府、特に財務省が担います。財務省は為替レートの動向を監視し、経済に与える影響を評価した上で、介入が必要かどうかを決定します。このプロセスには経済財政諮問会議などの政府内の会議での議論が含まれることがあります。
  2. 実施意思決定後の実際の市場での介入操作は日本銀行が行います。日銀は、財務省からの指示に基づいて外国為替市場に介入し、通貨の売買を実行します。

つまり、財務省が「いつ、どの程度の介入をするか」を決定し、日銀がその指示に従って具体的な市場操作を行うという形で協力しています。

このように、政策決定と実行が連携して行われることで、為替市場への介入が効果的に行われるよう配慮されています。

為替介入があったのかどうか?

2024年4月29日(月)の10時40分ころ、瞬間的に1ドルが160円を超えました。それまで円安が進んでいましたが、その後は急激に円高のほうにトレンドが変わりました。

現在は1ドル156円前後で推移しているようです。

この不思議な為替変動は、日銀が為替介入をしたことが原因かもしれません。

日本が祝日である場合でも、為替市場は国際的に連動しているため、他国が営業日であれば為替市場は活動しています。日本時間の10時の場合、アメリカ市場はまだ開いていないため、アジアの金融市場、特にシンガポールや香港などの市場が活動中です。

日本の中央銀行である日本銀行が為替介入を行う場合、以下のような手段で実施されることが考えられます:

  1. 外国為替市場の操作:日本銀行は、日本の銀行を通じてまたは直接にシンガポールや香港などの外国為替市場でドル売り・円買いの注文を出します。
  2. 市場のモニタリング:介入に先立ち、市場の動向や流動性の状態を詳細にモニタリングし、介入の効果を最大化するための最適なタイミングを見極めます。
  3. 銀行ネットワークの利用:日本銀行は自国内の銀行や海外の銀行ネットワークを通じて操作を行うことがあります。これにより、国内外の市場に円を供給し、円の価値を引き上げることが目的です。

このような介入は、為替レートに直接影響を与えるため、非常に注目される行動です。実際の介入が行われたかどうかは、通常、政府や中央銀行からの公式な発表を通じて確認されることになります。

日本は本日が祝日だったため、明日(4月30日)に日銀から、なんらかの発表があるのではないかと思われます。

生活者としての防衛手段は?

円安が進む状況下では、個々の生活者が直面する主な問題は、輸入品の価格上昇や海外旅行の高コスト化などです。円安が進行することで国内での物価も上昇する可能性があります。これに備えるために考えられる防衛手段をいくつか挙げます。

1. 支出の見直しと節約

  • 日々の消費を見直し:特に輸入される食品や消費財に依存している場合、国産品や代替品に切り替えることでコスト削減が可能です。またITサービスに関しては海外サービスから国産に切り替えすることを選択することなどで円安の抑止にもつながるかもしれません。
  • エネルギー使用の最適化:電気やガスなどのエネルギー消費を抑えるために、節電や省エネ製品への投資を検討します。

2. 資産の分散

  • 外貨預金:ドルやユーロなど、他の通貨での預金を考えることで、円安のリスクを分散できます。
  • 外国株式の保有:国際的な株式市場に投資することで、円安による損失を補う可能性があります。
  • 金や不動産などの実物資産:インフレや通貨の価値低下に対して一定の保護を提供することが期待されます。

3. スキルアップと副業

  • スキルの向上:職場でのスキルアップや新たな資格取得により、収入を増やす可能性を高めます。
  • 副業の検討:副業を通じて収入源を増やすことで、物価上昇に対する耐性を持たせることができます。

4. 長期的な貯蓄と投資戦略

  • 確定拠出年金(iDeCo)やNISA:税制優遇を受けられる投資制度を活用して、長期的な資産形成を図ります。

5. 生活基盤の見直し

  • 地域や住宅の見直し:生活コストの低い地域への移住や、より経済的な住宅選びを考えることも一つの手段です。

これらの対策は、円安だけでなく、将来の不確実性に対しても広く有効な防衛手段となります。個々の生活状況やリスク許容度に応じて、適切な対策を選択することが重要です。