2025年10月11日(土)に、石川県津幡町にある老舗書店「スガイ書店」が開催した創業105周年記念イベントにお邪魔してきました。昨年の104周年イベントに引き続きの参加となりましたが、今年もまた、多くの地域の方々で賑わう店内の様子に、胸が熱くなるのを感じました。
インターネットの普及により、私たちはいつでもどこでも手軽に本を購入できるようになりました。しかしその一方で、町の書店は年々その数を減らしています。そんな時代の中、スガイ書店はなぜ105年もの長きにわたり、この場所で人々に愛され続けているのでしょうか。
津幡町のスガイ書店は2025年が105周年
今回のイベントに参加し、その理由を改めて肌で感じることができました。この記事では、当日の賑やかなイベントの様子とともに、デジタル時代におけるリアルな「町の書店」が持つ価値について、私なりの視点で考察してみたいと思います。
105年の歴史が紡ぐ、温かい人の輪
スガイ書店は、大正9年(1920年)創業。なんと105年もの歴史を持つ、津幡町にとってなくてはならない存在です。私がお店に到着すると、まず目に飛び込んできたのは「祝105周年」と書かれた手作りの温かいメッセージでした。
▼店頭の手書きポップの数々
店舗横イベント会場に入ると、そこはすでにお客様の熱気で満ちあふれていました。子どもたちの楽しそうな声、そして大人たちの笑顔。風船で飾られた店内は、まさにお祭り一色です。
くじ引きやスーパーボールを楽しむ家族づれ、ブックカバーのワークショップを楽しむ人たち、そして店主の吉田さんと談笑する人。誰もがこの日を心から楽しんでいる様子が伝わってきます。
子どもたちの笑顔はじける!手作りワークショップ
今年のイベントの目玉の一つが、子ども向けのワークショップでした。店内の特設スペースでは、多くの子どもたちが目を輝かせながら、オリジナルブックカバー作りに夢中になっていました。
工芸ステンシルセットを使って世界に一つだけの文庫本カバーを作ります。お子様をさしおいて大人の方が夢中になっているケースもありました。
このように、本を売るだけでなく、人々が集い、何かを体験できる「場」を提供すること。これもスガイ書店が地域に愛される大きな理由の一つなのだと感じました。
輪投げコーナーは無料で何度でも利用できるようになっていました。
「町の書店」は最高のコミュニケーション空間
人気のキッチンカー「ルート18」さんは昨年に引き続き出店していました。このキッチンカーのハンバーガーは大人気です。
イベント中、私が特に印象的だったのは、店内の至る所で見られた温かいコミュニケーションの光景です。
店主の吉田さん親子は、訪れるお客様一人ひとりに丁寧に声をかけ、笑顔で言葉を交わしていました。それは単なる店員と客という関係性を超えた、人と人との温かいつながりそのものです。
「この本、面白かったですよ」「最近、お孫さんはお元気ですか?」といった何気ない会話が、お店のあちこちで生まれています。これは、目的の本を検索してクリックするだけのオンライン書店では決して味わうことのできない体験です。
偶然隣り合ったお客様同士で会話が弾むこともあります。本という共通の趣味を通じて、新たなつながりが生まれる。スガイ書店は、本を媒介とした最高の「コミュニティハブ」として機能しているのです。
▼店長の吉田一平さん
▼吉田由記子専務は一平さんの実の母親です
津幡町は大相撲で横綱になった「大の里」のふるさとです。スガイ書店さんは会社ぐるみで大の里を応援しています。サイン入りの色紙や関連グッズが多数展示されていました。相撲好きの方々とのコミュニケーションも深まっているみたいですね。
デジタル時代だからこそ光る「リアル書店の価値」
経営コンサルタントという仕事柄、私は常々「体験価値」の重要性について考えています。商品を売るだけでなく、その商品を通じて顧客にどのような素晴らしい体験を提供できるか。それがこれからのビジネスの鍵を握ると確信しています。
その点で、スガイ書店の取り組みはまさに「体験価値」の宝庫です。
- 偶然の出会いという体験: ネット書店では、自分の興味のある分野の本ばかりがおすすめされがちです。しかし、リアルな書店を歩けば、今まで全く知らなかった本や、思いがけないジャンルの本と「偶然出会う」ことができます。その一冊が、人生を変えることだってあるかもしれません。スガイ書店の丁寧に整えられた本棚や、心のこもった手書きのポップは、そんな素敵な出会いを演出してくれます。
- 人とのつながりという体験: 前述したように、店主や他のお客さんとのコミュニケーションは、リアル書店ならではの大きな魅力です。おすすめの本を教えてもらったり、感想を語り合ったりする時間は、本を読むのと同じくらい、あるいはそれ以上に豊かな時間と言えるでしょう。
- イベントという非日常体験: 今回のような周年祭は、地域の人々にとって特別な「ハレの日」です。家族で出かけ、ワークショップに参加し、お祭りの雰囲気を楽しむ。こうした非日常の楽しい思い出は、お店への愛着をより一層深めていきます。
スガイ書店の105周年イベントは、単なる安売りセールではありませんでした。それは、これまでお店を支えてくれた地域の方々への感謝を伝え、これからも共にある未来を確かめ合う、心温まるコミュニケーションの場だったのです。顧客との絆作りがしっかりできている好事例です。
まとめ:町の宝、スガイ書店から学ぶこと
105年という、一世紀を超える長い時間。それは、ただ商売を続けていれば到達できる数字ではありません。時代の変化の波を乗り越え、地域の人々との信頼関係を丁寧に、こつこつと築き上げてきたからこその偉業です。
スガイ書店の賑わいを見ていると、リアルな店舗が持つ可能性は、まだまだ無限にあると強く感じさせられます。大切なのは、単に「モノ」を売るのではなく、そこに集う人々の心を豊かにする「コト(体験)」を提供し続けること。
今回のイベントは、私たち中小企業経営者やマーケティング担当者にとっても、顧客との関係構築やコミュニティ形成の重要性を再認識させてくれる、多くのヒントに満ちていました。
スガイ書店さん、創業105周年、誠におめでとうございます。 この町の文化を照らし続ける大切な灯りとして、これからも益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。また来年も、この温かい場所に帰ってこられることを楽しみにしています。
▼スガイ書店さんの外観と右に見えるイベント会場

〒929-0323 石川県河北郡津幡町津幡ハ13
TEL :076-289-4131 FAX :076-288-3799

この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
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