「蚊帳」を「かや」と読めない若者が増えているそうです。そのように指摘されて、現代では蚊帳を使うシーンが少なくなっていることに気づきました。私が子供のころには夏の寝室には蚊帳があるのが普通でした。しかし、もう長い間、蚊帳を見ていません。記憶を遡ってみると、蚊帳を使わなくなってから40年以上たっていると思います。
これまで蚊帳は日本3大産地で製造されていましたが、需要減少とともに産地も生産縮小し、今では福井県が国内最大の産地で、なんと全国で9割のシェアがあるそうです。
蚊帳は今でも化学薬品を使わないエコロジーな防虫対策としてまだまだ使われています。とくに小さなお子様がいるような家庭では意外に人気なようです。赤ちゃんがいる家庭では殺虫剤や蚊取り線香をあまり使いたくないからでしょうね。
蚊帳の国内3大産地
蚊帳の3大産地は、滋賀県、奈良県、福井県
蚊帳の3大産地といわれているのは、滋賀県、奈良県、福井県の3つの地域です。蚊帳産地といわれるところは繊維産業が発達しているという共通点があります。
滋賀県は近江の麻蚊帳(あさがや)、奈良県は大和の綿蚊帳(めんがや)、そして福井県は江戸時代より良質の麻製品を作っていたことから越前の麻蚊帳(あさがや)と言われるなど繊維の特産品がありました。
滋賀県の蚊帳
滋賀県の蚊帳は、近江蚊帳(おうみかや)といわれていました。
https://kotobank.jp/word/近江蚊帳-1280498
には、以下のように紹介されています。
近江(滋賀県)の特産である蚊帳。蒲生(がもう)郡八幡(はちまん)および坂田郡長浜を主産地とし、それぞれ八幡蚊帳、長浜蚊帳(浜蚊帳)とよばれた。八幡では早く天正(てんしょう)年間(1573~92)から奈良蚊帳を売買する商人がいたが、慶長(けいちょう)年間(1596~1615)ころになると地元の麻糸を買い集めて蚊帳を織らせ、八幡蚊帳として売り出すようになった。寛永(かんえい)(1624~44)になると越前(えちぜん)(福井県)から大量の麻糸を輸入して生産するに至り、1639年(寛永16)には町内蚊帳屋17軒、1653年(承応2)ころには仲間の「えびす講」で申合せを定めるまでに発展した。
上記の内容からも、奈良や越前(今の福井県)との関係が深いことがわかります。このころから滋賀県、奈良県、福井県という3大産地が連携しあうことで蚊帳の3大産地が形成されていったのかもしれません。
奈良県の蚊帳
奈良県の蚊帳はさらに歴史が古いようです。
奈良県織物工業組合には
https://www.apparel-nara.com/orimono/kayakiji/
にて蚊帳のことが紹介されています。
日本の蚊帳生地の歴史は『日本書紀』に記されている応神天皇の時代(西暦270~312年)までさかのぼります。中国の呉から蚊屋衣縫という蚊帳作りの技術者が渡来したことが始まりといわれ、奈良時代から貴族の住まいで絹の蚊帳を用いた絵が描かれた書物が見つかっています。室町時代になると「奈良蚊帳」と呼ばれる蚊帳が貴族や武士の間で贈答品などに使われた記録(『大乗院寺社雑事記』など)が残っています。
奈良時代から室町時代にかけて「奈良蚊帳」と呼ばれる蚊帳があったというのは驚きますね。
福井県の蚊帳
福井県が地元の産業や企業を紹介している情報サイトのなかの1ページに蚊帳のことを紹介しているページがありました。
実は福井の技 各種蚊帳の生産 国内シェアNo.1
http://info.pref.fukui.jp/tisan/sangakukan/jitsuwafukui/housing/174.html
このページ内の情報をみると、「現在の蚊帳生産について国内シェアNO1は福井県」だということが書いてあります。
現在の国内産地はほぼ福井県に一極集中
われわれの生活スタイルが洋風化し和室が減少するなど大きく変化してきたことで、蚊帳を使うシーンが少なくなり蚊帳の需要は減少。蚊帳の3大生産産地もその影響を大きく受けており、蚊帳の生産量がとても減少しています。
とくに滋賀県や奈良県では蚊帳の生産が激減しているようで、蚊帳の生産をやめてしまう企業が続出しています。
その結果として、現在の国内蚊帳産地は福井県福井市が国内生産の9割のシェアになっているそうです。しかも1社に集中しています。いわゆる残存者利益というやつですね。
▼2023年6月3日(土)の福井新聞記事
知人から見せてもらった新聞記事によると、国内シェアの9割が福井県福井市の企業が生産しているとのことです。
この企業はタナカ株式会社といい、田中農産グループを名乗っており農業関係の企業といえます。そのグループ中核となっているタナカ農産株式会社は無農薬米・JAS有機の米を生産する農業法人です。
国内蚊帳生産No.1の「蚊帳通販.com」:タナカ株式会社
https://www.kenko-kaya.com/
6月は、オーダーメイドの蚊帳の受注もあるため大忙しのようで、蚊帳の生地をミシンを使って縫う様子が紹介されています。
この蚊帳通販.comのなかにも、国内3大産地に関する情報がありました。
https://www.kenko-kaya.com/html/page4.html
から該当部分を引用すると以下のとおりです。
江戸時代の話になりますが、江戸幕府は1つの藩が力をつけるのを恐れて特産品を各地に分散しました。麻を越前(福井)で栽培して麻糸を作り、それを福井と近江(滋賀)で織物にした後、琵琶湖の水で晒して白い布地にし、蚊帳にしました(近江蚊帳)。奈良県は平安朝時代より大和蚊帳(綿蚊帳) です。それで、福井・滋賀・奈良は、もともと蚊帳の生産地で深いつながりがあります。
越前(福井県)は昔より、日本海側で雪も降り長繊維の絹織物の羽二重織物が盛んで、大正時代より人造絹糸(レーヨン)・合成繊維(ナイロン・テトロン等)が登場し、福井がその長繊維の産地となりました。
最近、この福井県のタナカ株式会社は蚊帳に関する情報サイトを立ち上げたようです。No1メーカーならば、業界を代表して蚊帳の認知度向上や需要促進に効果があるように情報発信してほしいな、と思います。
蚊帳とは
蚊帳は大きな四角形の布製の箱のような形状をしており、通常は寝床の上に吊るされます。そして、寝る時にその中に入ることで、蚊などの虫から守ることができます。布は通気性がありながらも蚊の侵入を防ぐために細かい網目状に作られています。
過去の日本では、夏の季節や虫が多い地域では特に蚊帳が重宝されました。そして、今日でも特定の状況下やアウトドアでの使用などにおいて、蚊帳は有用な道具として活躍しています。
また、蚊帳はただ虫を遮断するだけではなく、風通しを良くし、中の空気を涼しく保つという効果もあります。これは、暑い夏の夜には特にありがたい特徴です。
ただし、現代の日本ではエアコンや虫除けスプレー、電子蚊取り器など、他の方法で虫を防ぐことが一般的となり、蚊帳が日常的に使われることは少なくなりました。それでも、蚊帳はその独特な風情を持つ道具として、日本の文化の一部とも言える存在です。
蚊帳が登場している文学作品や映画など
蚊帳に関して言及している文学作品については以下のような例があります。
- 『枕草子』(清少納言): 清少納言は中宮定子に仕える女房でしたが、蚊帳を利用することができなかったようです。彼女は『枕草子』で蚊の羽音について言及しており、「寝ようと思った時に蚊に起こされるのが憎らしい」と表現しています。これは1000年前から共感できる「あるある」であったことが伺えます。
- 小林一茶の俳句: 小林一茶は、蚊帳に関する情景を詠んだ俳句を残しています。例えば、「むら雨や ほろ蚊帳の子に 風とどく」という句は、一茶が子どもたちを愛おしく思う眼差しを感じさせる夏の情景を描いています。
- 斎藤茂吉の歌: 斎藤茂吉は、「蚊帳のなかに 放ちし蛍 夕されば おのれ光りて 飛びそめにけり」という歌を詠んでおり、これは蚊帳の中に蛍を放し、夕方になって蛍が自ら光って飛び始める夏の朧夜を繊細に映し出しています。
- 映画「となりのトトロ」: スタジオジブリのアニメ映画「となりのトトロ」では、蚊帳が吊られるシーンがあり、その中で子どもたちが興奮してはしゃいでいる様子が描かれています。これは江戸川柳にも見られる、蚊帳に関する風景の一つです。
となりのトトロに蚊帳のシーンがありましたが、今でもSNSで言及されており、独自の世界観が人気になっています。
蚊帳はお子さんのアレルギー対策にも有効です
蚊帳というと、開け締めに気を使ったり、暑苦しいイメージがあったりと、面倒な印象があります。しかし、殺虫剤や防虫剤(蚊取り線香や防虫マット器)などのような薬剤を人がいる空間に撒き散らすより、はるかに安全で安心です。
とくに現代はアレルギーを起こす人が増えています。
赤ちゃんや小さなお子さんがいる場合は、アレルギー予防対策としても蚊帳は有効ですね。
少子化の時代になりました。
子どもたちには「蚊帳のある生活」という日本文化を伝える意味でも、幼少期には蚊帳を使うライフスタイルも考えてみてほしいものです。
本日(6月21日)は夏至です。一年で昼がもっとも長いという太陽の一日です。これから蚊のシーズン本番ですので、きちんと防虫対策したいですね。
この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
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