2026年9月11日、公益財団法人いしかわ農業総合支援機構(INATO)が主催する「いしかわ耕稼塾 経営革新スキルアップコース」で、財務の講師を担当しました。全3回シリーズの第2回です。この記事は当日の記録と、最終回(9月25日)に向けた受講生のみなさまへのご案内を兼ねています。

第1回の様子はこちらの記事にまとめてあります。

第2回のテーマは損益分岐点分析
第1回では、損益計算書と貸借対照表がそれぞれ何を語っているのかを確認しました。第2回はそこから一歩進めて、「いくら売れば黒字になるのか」という、経営者が日々直面する問いに数字で答えられるようにする回です。
費用を変動費と固定費に分け、限界利益という考え方を通して損益分岐点を求める。手順そのものは決して難しくありません。ただ、自社の費用をどう分けるかという判断のところで、業種ごとの事情が顔を出します。農業の場合、人件費や機械の減価償却費をどちら側に置くかで見え方が変わってきますので、そのあたりは実際の数字を見ながら一緒に確認しました。

当日は演習を多めに入れています。たとえば「ワイン1本1500円を5%値上げするか、5%値下げするか」という問いかけ。値下げして数量を伸ばす戦略と、値上げして単価を取る戦略と、どちらが利益に効くのか。感覚で答えると多くの方が迷いますが、限界利益率を使って計算すると答えははっきり出ます。価格を1円動かすことの重みを、体感として持ち帰っていただくのが狙いです。
受講生のみなさんはすでに経営を担っている方々なので、演習の途中で「うちの場合はこの費用はどう扱うのか」という具体的な質問が次々に出てきます。こういうやり取りができるのが、この規模の講座の良さだと思っています。
最終回(9月25日)までの宿題
最終回は自社の数字を持ち寄って分析する回になります。そのための宿題を出しました。当日配布した資料にもありますが、あらためてこちらに記しておきます。

宿題1:自社の損益分岐点を簡易計算する
自社の損益計算書から、売上・売上原価・販売管理費・営業利益を書き出します。次に売上原価の内訳を人件費とその他に分け、次のように組み替えてください。
- 変動費=売上原価 − 人件費
- 固定費=販売管理費 + 人件費
ここまで整理できれば、あとは公式に当てはめるだけです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
厳密な原価計算をしようとすると手が止まってしまいますので、まずはこの簡易版で構いません。自社の損益分岐点がどのあたりにあるのか、そして今の売上がそこからどれだけ離れているのか。その距離感をつかむことが目的です。
宿題2:A農園・B農場と自社を並べて比較する
資料に載せているA農園・B農場の数値の横に、自社の数値を入れて比較してください。比較する項目は、売上高・売上原価・売上総利益・販売費及び一般管理費・営業利益・売上高営業利益率・営業外収入・営業外費用・経常利益・売上高経常利益率・総資本・総資本回転率・総資本経常利益率です。
第1回でお伝えしたとおり、金額の大小で比べても経営の巧拙は見えてきません。率で並べることで初めて、自社の立ち位置が見えてきます。
この作業はエクセルのテンプレートを用意しています。所得税青色申告決算書(農業所得用)のどの欄をどこに転記すればよいかを、資料に赤字で示してありますので、そのとおりに入力すれば利益率や回転率は自動計算されます。ゼロから表を作る必要はありません。
宿題3:3期分のBSとPLを図にして比較する
単年度だけを見ても、その数字が良いのか悪いのかは判断できません。3期分を並べて推移で見ると、設備投資をした年、借入を返した年、利益の使い道といった経営行動が浮かび上がってきます。
BSとPLを面積の図に変換するエクセルも同梱していますので、数字が苦手な方はまず図から入ってください。流動資産と固定資産のバランス、純資産の厚み、原価と販管費の構成。表では読み取りにくい特徴が、図にすると一目で分かります。資料の例示に使っている数値は実在する外食チェーンのものですので、そこは自社の数値に置き換えて算出してください。
なおエクセル一式のダウンロード先は、当日の配布資料に記載しています。第1回の資料と同様、最終回でも使用しますのでお手元に残しておいてください。
3期分の財務構造分析は当方で代行することもできます
宿題3について、「エクセルに入力する時間が取れない」「そもそも自分の入力が合っているか不安」という方もいらっしゃると思います。
当社では、決算書から財務構造を自動で分析し、BSとPLの構造を図として出力するアプリを独自に開発しています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

3期分の財務諸表(決算書)を事前にご提出いただければ、こちらでこのアプリを使って財務分析を実施し、分析資料としてお渡しすることが可能です。最終回でその資料を手元に置きながら議論できれば、宿題の答え合わせから一歩進んで、自社の課題をどう解くかという話にまで踏み込めます。
ご希望の方は、最終回までに余裕をもってご連絡ください。お預かりした決算書は分析目的にのみ使用し、他に開示することはありません。
最終回は自社の数字で議論します

9月25日の第3回は、これまでの2回で学んだ見方を自社に当てはめる回です。収益性・安全性・効率性という3つの角度から自社を点検し、どこに手を打つべきかを整理します。宿題をやってきていただけると、その分だけ得られるものが大きくなる構成にしてあります。
完璧に仕上げる必要はありません。途中で分からなくなった箇所があれば、それ自体が最終回の議論の材料になります。手を動かしたうえで残った疑問を持ってきてください。

この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
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