2026年9月11日(金)、金沢市鞍月の石川県地場産業振興センターで、石川県中小企業団体中央会主催「Geminiで始めるGAS業務アプリ体験研修」の第1回を開催しました。講師は私、株式会社ドモドモコーポレーション代表の遠田幹雄と、同じく中小企業診断士の古賀大介さんの2名が担当しました。

先週(9月4日)の「生成AIの最前線を知る」が座学だったのに対し、今回からはノートパソコンを持ち込んでのワーク型研修です。13時30分から15時30分までの2時間、参加者の皆さまが実際に手を動かして、自分専用のWebアプリを1本つくりあげました。
前回の座学編の開催報告はこちらです。

急きょ内容を変更しました、「Gem」廃止のため
研修の冒頭で、参加者の皆さまにおわびと変更のご案内をしました。当初の告知では、GeminiのGem(役割を与えたAIアシスタント)の解説を予定していましたが、Gemの廃止が決定したため、この部分を取りやめました。

Gemの代替となるのは「Skills」という新機能です。ただし現状では実装時期の具体的な発表がありません。これまでのGemが「〇〇の専門家」という役割(キャラクター)を与えるものだったのに対し、Skillsは「指定したファイルを読み込み、決まった手順で処理し、特定の形式で出力する」という、業務タスクのエージェントへ進化する方向性が示唆されています。
なお、現在のGemの設定は自動では引き継がれません。Gemを使っている方は、指示内容(プロンプト)をメモ帳などへ手動で保存しておくことをおすすめします。
この変更により、9月11日と18日の2回とも、まるごとGASアプリ作成のワークにあてることになりました。結果として、作る時間がたっぷり取れたのはケガの功名だったかもしれません。
無料の個人Googleアカウントで全員そろえました
今回の研修では、会社のGoogle Workspaceではなく無料の個人Googleアカウントを使いました。

理由は本番運用を想定しているからではありません。会社アカウントは管理者の設定によってApps Scriptが使えないことがあり、当日その場で解決できないからです。全員が同じ条件・同じ手順で進められるようにするための選択でした。
そのうえで、安全面の共通ルールを最初に確認しました。
- 名前欄には本名ではなくニックネームを入れる
- 顧客名・メールアドレス・売上などの実データは入力しない
- 研修用のURLをSNSやWebサイトに掲載しない
- 複数のGoogleアカウントを同じブラウザ画面で混在させない
- 研修後は公開範囲を見直すか、デプロイをアーカイブする
とくに強調したのは、Geminiの無料版は入力内容がAIの学習に利用される可能性があるという点です。今回はチャットの文脈を引き継ぐために履歴をオンにして進めましたが、だからこそ実在の情報は入れない。有料のWorkspace版のようなセキュアな環境とは違い、無料版ではユーザー自身の自衛が必要になります。
題材は「おみくじ」、でも目的はおみくじではありません
最初の題材にはおみくじWebアプリを選びました。遊びのように見えますが、これには理由があります。

- 結果がすぐ画面に出るので「動いた」という実感を得やすい
- 失敗しても業務や顧客に影響しない
- 抽選ルールを「マスタ」、引いた記録を「履歴」に分けられる
- 日報・受注・問い合わせなど、実際の業務にそのまま置き換えられる
小さな業務アプリは、入力 → 処理 → 保存 → 出力の4つに分けて考えられます。おみくじの場合は「名前を入れてボタンを押す(入力)→ 重みに従って抽選する(処理)→ スプレッドシートに1行追記する(保存)→ 運勢と一言を表示する(出力)」です。この構造は、日報アプリでも受付アプリでもまったく同じです。
そしてスプレッドシートに記録が貯まっていくということは、自社だけの生データが貯まっていくということでもあります。中小企業にとって大事なのは、他社から買えないこの生データだと私は考えています。
Geminiにコードを書いてもらい、GASで公開しました

ワークの流れはこうです。
- 新しいスプレッドシートを作り、拡張機能からApps Scriptを開く
- 配布したプロンプトをGeminiに貼り、「コード.gs」と「index.html」の2ファイルを全文で出してもらう
- 2つのファイルに丸ごと貼り付けて保存する
- 「デプロイ」からウェブアプリとして公開し、発行されたURLを開く
プロンプトで必ず指定したのは「コードは省略せず、2ファイルの全文を出す」という一文です。生成AIは親切のつもりで途中を省略することがあり、そのまま貼ると動きません。
公開時の警告画面では、あえて立ち止まってもらいました。自分のプロジェクト名になっているか、表示されているアカウントは正しいか、求められている権限は想定どおりか。「自分で作ったから無条件に大丈夫」ではなく、確認してから進む習慣をつけてほしいからです。
動いたら、同じURLをスマートフォンでも開いてもらいました。自分のスマホでさっきまでなかったアプリが動く。この瞬間の反応がいちばんよかったです。
後半では、スプレッドシートと連携するよう修正しました。「マスタ」シートに運勢・重み・一言を持たせ、「履歴」シートに日時・運勢・一言・名前を1行ずつ追記する形です。重みの初期値は大吉10、中吉20、小吉25、吉25、末吉15、凶4、大凶1としました。
応用として「しょーゆーこと占い」のようにテーマを変えてみた方もいました。Geminiに日本語で伝えるだけで、見た目も文言も変わります。
本日の核心は、コード変更とデータ変更の区別です
研修でいちばん伝えたかったのは、地味ですがこの2行です。
- コードを変えた → 再デプロイが必要
- データを変えた → 再デプロイは不要
マスタシートの大吉の重みを999に書き換えると、抽選結果は変わります。しかし再デプロイはしていません。データを変えただけだからです。仕組みを変えるのか、中身を変えるのか。この線引きができると、アプリの運用がぐっと楽になります。
あわせて、最も多い落とし穴も共有しました。コードを直したのに変わらないというとき、たいてい「新しいデプロイ」を作ってしまい、古いURLを開いています。正しくは「デプロイを管理」から編集し、新しいバージョンを既存デプロイに割り当てる。こうするとURLを変えずに更新できます。
【宿題】来週までに、自社の業務アプリのアイデアを一つ考えてきてください
ここが今回のいちばん大事なお知らせです。
次回9月18日(金)は最終回で、各自が自分の業務アプリを実際に作る回になります。当日その場でネタを考えると制作時間が足りません。そこで参加者の皆さまには宿題をお願いしました。
▼宿題:次回までに、作ってみたい業務アプリを一つ考えてくること
コードを書いてくる宿題ではありません。紙やスマホのメモに、困りごとを書くだけで構いません。考えるときの切り口は次のとおりです。
- 誰が使うか
- 何を入力するか
- どんなルールで処理するか
- どこに保存するか
- 何を表示・通知するか
- 人間が何を確認するか
- 機密情報を含むか
- 最初にどこまで作るか
当日は、この内容を次の7項目に整理して、そのままGeminiへの指示文に変換します。
- 困りごと:現在、何に時間や手間がかかっているか
- 利用者:誰が入力し、誰が結果を見るか
- 入力:メール・フォーム・CSV・手入力など
- GASの処理:抽出・計算・転記・PDF・通知など
- 保存:スプレッドシート・ドライブなど
- 出力:画面・メール・一覧・PDFなど
- 人間の確認:送信・公開・契約など、どこで確認するか
題材選びのコツもお伝えしておきます。最初の1本は、次の条件を満たす業務を選んでください。
- 何度も繰り返している
- 手順や判断ルールがある
- 入力するデータが用意できる
- 小さな範囲から試せる
- 失敗しても重大事故にならない
逆に、機密性が高い業務、例外だらけの業務、止まると事業が止まる基幹業務は、最初の題材から外してください。うまくいかない確率が高く、せっかくの体験が「やっぱりムリだった」で終わってしまいます。
グループワークでは「おみくじの履歴記録は、タイムカードの代用になるのでは?」というアイデアも出ました。名前と日時を記録する仕組みは、そのまま出退勤記録です。こういう発想の転換が、そのまま業務アプリの種になります。
次回9月18日は最終回、個人制作と発表です
第2回の流れは次のとおりです。
- 前回のおみくじアプリを1回動かして再開確認
- 活用実例の紹介(メール管理、写真日報、音声メモのライフログ、財務分析、ブログ自動生成など)
- グループディスカッションで7項目を整理
- 各自が自分の業務アプリを制作
- グループ内で共有し、各グループから発表
- フォロータイムと、公開状態の整理
持ち物は今回と同じく、ノートパソコン、無料のGoogleアカウント、電源コードです。今回作ったスプレッドシートとApps ScriptのURLも、必ず開ける状態にしてきてください。
なお、参加者の顔ぶれは毎回変わります。先週の座学に出ていない方、今週だけの方、来週が初参加という方もいらっしゃいます。グループワークの際は、そのことを踏まえて意見交換をお願いします。
コピペで使えるコードは受講者には提供しています。ブックマークしておくと便利です。
完璧より、小さく試せる仕組みから

今回の研修で、参加者全員がWebアプリを1本公開しました。2時間前まで一度もコードを書いたことがなかった方も含めてです。
ただし、完成そのものがゴールではありません。大事なのは、GASの構造を理解して、自社業務への置き換え案を持ち帰ることです。実際、うまく動かなかった方も、エラー文とプロンプトを保存してあれば来週そこから再開できます。
生成AIを使えば、コードは数分で出てきます。しかし「どの業務を、どこまで、誰が確認して任せるのか」を決めるのは人間の仕事です。ここは今後も変わらないと思います。
小さく作る、実際に使う、直す。この繰り返しが、結局はいちばん早い。来週の最終回で、参加者の皆さまがどんな業務アプリを持ち寄ってくださるか、いまから楽しみにしています。
ご参加いただいた皆さま、共同講師の古賀大介さん、そして、石川県中小企業診断士協会のAI研究会から見学と称して実際はワークのサポートをしてくれたみなさん、開催にご尽力いただいた石川県中小企業団体中央会の皆さま、本当にありがとうございました。

この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
保有資格:中小企業診断士、情報処理技術者など
会社概要およびプロフィールは株式会社ドモドモコーポレーションの会社案内にて紹介していますので興味ある方はご覧ください。
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