財団法人全国中小企業取引振興協会の「中小企業のIT化支援Q&A26」で巻頭の11ページを遠田が執筆

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財団法人全国中小企業取引振興協会が「中小企業のIT化支援Q&A26」という情報誌を出版した。その巻頭の11ページを遠田が執筆した。

以下は遠田が執筆した分です。PDFでダウンロードも可能です。

遠田が執筆したのは以下の3つのQ&A部分
Q1 ソーシャルメディアはビジネスに有効か?
Q2 ブログをビジネスに活用するには?
Q3 フェイスブック(Facebook)のビジネスへの活用は?


Q1 ソーシャルメディアはビジネスに有効か?

A
「ソーシャルメディア」とは、利用する生活者自身が情報を発信しコミュニティを形成していくメディアのことで、「マスメディア」の反対語です。個人が発信する情報がインターネットを介して不特定多数の利用者に対して公開され、閲覧した利用者はレスポンスを返すことができるしくみになっています。
実は「ソーシャルメディア」と呼ばれるWEBサービスは多様で、ブログ一般を始め、ツイッター、フェイスブック、ミクシィなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を含んだ総称とされています。
この「ソーシャルメディア」のビジネス活用が、ここ最近話題になっています。うまく使えばビジネスにとても有効ですが、一方で使い方を間違えると逆効果になる可能性もあると言われています。

(1)ソーシャルメディアのメリット・デメリット

1.生活者のメディアへの対応が大きく変化した
ソーシャルメディアがここまで大きく取り上げられる理由は、利用する生活者のマインドが大きく変化したことがあげられます。
マスメディアは、そもそも「1対多」で伝える情報が中心であり、少数のメディアから大衆に向けた情報伝達方法です。そのため情報内容は概要的で画一的なため、多様なニーズを持つ生活者にとって必ずしも必要な情報とは限りません。
若者を中心としたテレビ離れ・新聞離れが進み、携帯電話やスマートフォンでのインターネット利用が増えています。もはや「脱マスメディア」と言っても過言ではない状況です。

2.インターネット利用が進む
インターネットと検索エンジンの普及により、必要な時に欲しい情報を検索により探せば、かなり正確な情報が得られるようになってきています。最新ニュースは、テレビや新聞よりもインターネットの方が早く詳細であることが増えています。
スマートフォンの利用拡大はその傾向に拍車をかけています。いつでもどこでもインターネットができる環境になった現在では、マスメディアの情報よりも、インターネットからの情報を優先する生活者も増えています。

3.モノを買うときの意思決定媒体はインターネット
広告媒体としてのマスメディアは「告知」するという効果は今でも十分に持ってります。し かし、生活者が商品やサービスに興味を持ち、購入するかどうかという意思決定に関わるときの媒体はインターネットに変わりつつあります。生活者は、自分が 興味を持った商品やサービスなどについて、検索エンジンで検索したり、ソーシャルメディアでの口コミを見たりして調べた上で、購入するかどうかや来店する かどうかを意思決定することが増えています。

4.検索エンジンとソーシャルメディア
生活者が購買に関わる意思決定をするときには、インターネットのどのようなサービスを使うのでしょう か。購入したい商品が性能やスペック重視の場合は検索したり「価格ドットコム」を見たりして決めるでしょう。また、購入した商品が飲食やサービスなどの場 合は、同様のサービスを体験した生活者の「口コミ」をブログなどのソーシャルメディアで探すでしょう。
これは、どちらかではなく、どちらも必要です。

5.この人から買いたいと思われることが重要成功要因
とくに中小企業にとって重要なのは「人」です。泥沼の価格競争に陥らないためにも、価 格以外の魅力を訴求する必要があります。生活者も価格だけが購買の理由ではありません。「助言」や「相談」を求めて来店する場合もありますし、なにより 「この人から買いたい」と、人の魅力で来店してくれることもあります。
このように魅力を訴求できるのが「人」であれば、WEB上でも「人の魅力」や「人間関係」を表現することが重要です。そして、それができるのが、ソーシャルメディアなのです。

(2)ソーシャルメディアの種別と特徴
なお、ソーシャルメディアと呼ばれるものには、一般的なブログを始め、フェイスブック、ツイッター、 ミクシーなどがあります。最近では、グーグルプラスやリンクトインなども日本語でのサービスが始まり、ソーシャルメディアの世界も多様なサービスが混在す る状況になっています。
ここでは、代表的なソーシャルメディアと企業のホームページとの関係について説明します。

1.企業のホームページとブログとフェイスブックの種別による、ビジネス活用の特徴と効果は、おおむね以下のようになります。
2.WEBの3階層活用が企業のWEB活用にとって重要です。
(WEBの3階層活用の図)


Q2 ブログをビジネスに活用するには?

A
「ブログ」は、ソーシャルメディアの1つです。簡易型日記で個人向けというのイメージが強いですが、そもそもブログとは、更新が簡単でSEO効果(検索エンジンでの上位表示)も高く、企業としても利用しやすいホームページ管理システムです。
ブログは、ヤフーやライブドアなどのWEBサービス業者が提供している「個人向けブログ」と、ビジネスでの利用を前提とした「企業向けブログ」に分けることができ、「企業向けブログ」のほうは「ビジネスブログ」と呼ばれています。
ビジネスブログは、文字通り「ビジネス」としての目的を持っており、「問合せをもらう」「資料請求やサンプル請求をしてもらう」「通販サイトに誘導する」などの販促効果を発揮することができます。

(1)ビジネスブログのメリット・デメリット

1.ブログの最大のメリットはSEO効果
ブログの最大のメリットはSEO効果が高いページを容易に作成し更新できることです。ブログは内部 のしくみが検索エンジンとの親和性が高いように設計され構築されるようにできています。ですから、記事数増加にほぼ比例してSEO効果が発揮されていきま すので、記事を書き続けていけば日に日にアクセス増加が見込めます。
それに、毎日記事を書けば、文章もどんどん上手になっていくものです。あまりSEO対策のことは気にしなくても、内容を充実し日々更新することに集中すればよいことが大きなメリットです。

2.ブログは独自ドメインにしたほうが有効
独自ドメインを「Yahoo!JAPAN」の例で説明すると、URLの 「http://www.yahoo.co.jp」のうち「yahoo.co.jp」の部分を独自ドメインといいます。独自ドメインには「.com」や 「.jp」などの種類がいくつかありますが、いずれにしても世界で唯一のアドレスであるという特徴があります。
そのため、独自ドメインには、信用性が高まること、SEO効果が高まることなどのメリットがあります。
特にSEO効果は独自ドメインごとに評価されますので、独自の情報を提供するビジネスブログの場合は独自ドメインのほうが有効です。
SEO効果を高めるためにも、ビジネスブログは独自ドメインで運用するほうがメリットが大きいです。

3.独自ドメインでない無料ブログはSEO効果が限定的
無料ブログはSEO効果が限定的です。無料のヤフーブログの例で説明すると、URLは「http://blogs.yahoo.co.jp/****」となります。(「****」の部分が個人ブログとして設定できる部分です。)
多 数の利用者が同じドメイン「blogs.yahoo.co.jp」を使ってブログを書いているため、検索エンジンからの評価は限定的です。同じヤフーブロ グで、同様のテーマを扱うブログが多数ある場合には自分のブログが検索結果にまったく表示されないかもしれないというリスクがあります。
たとえ ば、ヤフーで「日本酒」というキーワードで検索した場合の例で紹介しましょう。検索結果画面に、他人のヤフーブログの記事が上位表示されている状態のとき に、「日本酒」のことを書いていた自分のブログはまったく検索結果に表示されない場合があります。これは検索エンジンのひとまとめ効果とも言われますが、 同じドメインの中から検索結果に表示される記事は数件程度しか表示されないという特徴があるからです。

4.無料ブログはビジネスブログとしてはデメリットが多い
個人の日記風ブログの場合は、ヤフーやライブドアやアメブロなどのWEBサービス 業者が提供している無料ブログを使うことが多いのですが、ビジネスブログは原則として無料ブログを使わないほうがいいでしょう。無料ブログは、広告表示さ れたり、カスタマイズ制限があったり、独自ドメインが使えないなど、SEO効果も弱く、ビジネスとして継続的に使うには不向きだからです。
たとえ ば、自分がテーマにしているキーワードに関連した広告が勝手に表示されることで、せっかくブログを見てくれた人が広告のほうをクリックしてアクセスが外部 に流れてしまったらもったいないですね。せっかく多数の記事を書いても、ビジネスブログとしての効果が限定的なのでは、続けるモチベーションの持続も難し くなりますので、無料ブログは避けたほうがよいでしょう。

5.ブログには安価なレンタルサーバを活用する
レンタルサーバの利用料がかなり安くなっており、ビジネスブログとの相性もいいので活用を検 討しましょう。ビジネスブログとして定評があるブログシステムのムーバブルタイプ無料版(MTOS)やワードプレスを簡単にインストールして始めることが できます。しかも大容量で、10GB程度以上と十分ですし、独自ドメイン取得もできるレンタルサーバ契約が年間1万円内外で利用できるレンタルサーバも増 えています。
具体的には、さくらインターネット、ロリポップ、ファーストサーバのカウボーイなどがこのような条件に適合しており、他にも多様なレンタルサーバのサービスがあるので調べてみるといいでしょう。

6.ビジネスブログを提供するWEBサービス業者
レンタルサーバ契約やムーバブルタイプのインストールなどは簡単になったとはいえ、一般の 利用者には敷居が高く及び腰になる人も多いでしょう。もっとビジネスブログをスタートしやすい方法としては、WEBサービス業者が提供しているブログシス テムを利用する方法があります。
この方法ですと、インストールやFTP操作などの煩わしい作業部分がまったくなく、WEBサービスにIDとパスワードでログインするだけで利用開始できます。とにかく使ってみたいという方にはおすすめの方法です。
無 料ブログの上位サービスとして有料コースが用意されているのが、ライブドアやココログなどの大手ブログサービス会社です。一方、最初からビジネスブログを 意識した有料サービスとしては、「タイプパッド」や「みんビズ」があります。とくに「みんビズ」は2011年秋から始まったサービスで、中小企業基盤整備 機構(国の機関)も推奨しており、企業サイトとブログの両方を簡単に始めることができるシステムです。
基本的には、独自ドメインが使えて、ある程 度自由にカスタマイズができることがビジネスブログの条件になります。WEBサービス業者が提供しているブログサービスの中には、広告非表示で独自ドメイ ンが使えてカスタマイズがかなりできる有料サービスを提供しているところもあります。

(2)ビジネスブログとして利用できるサービス

■レンタルサーバを利用したビジネスブログ
独自ドメインも契約できるレンタルサーバ会社です。
ムーバブルタイプ(MTOS)やワードプレスなどの定評あるブログシステムをインストールしてビジネスブログとして使います。

さくらインターネット

ロリポップ

サーバ・カウボーイ

※他にも多数のレンタルサーバ会社がありますが、年間利用料金は1万円内外をひとつの目安にしましょう。

■WEBサービス業者の提供するビジネスブログ
用意されたブログシステムをIDとPWでログインしてすぐにスタートできるWEBサービスです。WEBサービス会社により管理画面がかなり違いますが、オンラインマニュアルなどが整備されています。

タイプパッド

ココログ
http://www.cocolog-nifty.com/
(有料のプランを選択します)

ライブドア
http://blog.livedoor.com/
(有料のプランを選択します)

みんビズ
http://www.minbiz.jp/
(最初の1年は無料で利用できます)

※年間利用料金は2万円程度以内を目安にするといいでしょう。


Q3 フェイスブック(Facebook)のビジネスへの活用は?

A
「フェイスブック」は、ソーシャルメディアと呼ばれているWEBサービスのひとつで、一人ひとりの生活者が気軽に自由に情報発信者(メディア) になって、共感する人たちと瞬時につながることができる可能性を秘めているメディアです。日本では2010年にツイッター利用者が爆発的に増加し、ソー シャルメディア革命と呼ばれるくらいの社会現象になりました。フェイスブックはツイッターよりもはるかに多い利用者がいて、ヤフーやグーグルよりも利用さ れている世界で一番使われているWEBサービスです。
すでに、ソーシャルメディアとしては世界NO1のフェイスブックですが、ビジネスとしての利用法はまだ確立されていない点も多く存在することは確かです。うまく活用すればビジネスへの波及効果は大きいですが、使い方を間違うと逆効果になる可能性もありますので注意が必要です。

(1)フェイスブックのメリット・デメリット

1.フェイスブックは利用者が世界一、でも日本では…
なんといってもフェイスブックは世界で一番使われているソーシャルメディアで、利用者は2011年9月に8億人を超えました。しかし、日本ではフェイスブックの普及が遅れています。2010年に入ってから利用者が急増し、夏ころには利用者が1000万人を超えました。
しかし、すでに先行するツイッターやミクシィの利用者は、それぞれ2000万人以上の利用者がいますので、まだまだ差があります。

2.実名登録の賛否両論
フェイスブックは、実名登録と本人の顔写真や実社会でのプロフィールの登録が義務づけられていることが他のSNSと 違う大きな特徴になっています。この実名登録には賛否両論があり、プロフィール公開を気にしない人がいる一方で、コンプレックスを感じる人にとっては見え ない壁を感じる脅威になっています。とくに日本は実名登録を嫌がる利用者が多いといわれており、今後のフェイスブックの普及の弊害になりそうです。

3.ビジネス利用としてのインフラ
フェイスブックの利用者は、実名登録により実在する人同士が交流する場としての巨大な情報インフラになっています。このことはビジネスとしては大きなメリットになっています。
ビジネスでは欠かせない名刺交換という儀式も、フェイスブックで事前に「友達」になっている人同士であれば、あまり意味をなさなくなっています。初めて会ったときには、既に旧知の仲だからです。
インターネット上でこのような人間関係が構築されることにより、これまでとは違ったビジネス関係が展開されることになります。ビジネスは人を媒介としますから、ビジネス利用のインフラとしてフェイスブック活用はますます進んでいく可能性があります。

4.基本は「ニュースフィード」で情報交流する
ニュースフィードとは、フェイスブック上での友達が何かの活動をしたときに、その告知をしてくれるところです。たとえば、以下のような情報を見ることができます。
・近況の更新情報
・写真や動画の更新情報
・基本データの更新情報
・友達が関心を持ったフィードやフェイスブックページ
・友達が新たにフォローしたユーザー
ニュースフィードを見ていれば、友達の人間関係情報がわかるようになり、これがフェイスブックのおもしろさでもあります。
フェイスブックは友達との交流が基本となっているサイトです。友達がプロフィールの更新や写真のアップロードなどをしているかもしれない。その今を知りたいと思うのが人間の心情です。

5.「いいね!」で広がる共感の人間関係
フェイスブックの特徴の1つに「いいね」というボタンがあります。これは「いいね!」と感じたら気軽にクリックするだけという簡単なものですが、非常に強いつながりを創出する可能性を秘めています。
友達が近況が自分のニュースフィードに表示され、共感したら「いいね!」をクリックしましょう。それだけで友達に同感していることを伝えることができます。近況について意見があれば、「コメントする」をクリックして意見を書き込むこともできます。
さらに、そのやりとりは自分だけでなく友達の友達のニュースフィードにも露出されます。共感が強いコメントは、友達の友達の友達…にまで「いいね!」がクリックされ格段に広がる可能性もあります。
このように自然に人間関係が醸成されていき、自然に人間関係が広がっていくのは「いいね!」の効果が絶大だからでしょう。

6.フェイスブックページにはSEO効果もある
フェイスブックにはフェイスブックページというブログのようなしくみが用意されていて、商品 やサービスの紹介など企業が無料で自由に使うことができます。このフェイスブックページは、フェイスブックにログインしなくても見ることができるため、検 索エンジンにもヒットします。それなりにSEO効果も期待できるため、ビジネスブログのように活用することが可能です。

7.モノを売るより人を売るのがフェイスブックの醍醐味
話題性から、フェイスブックに飛びつき、誰でもかれでも友達申請を行う人もいます。また、自社商品やサービスを売り込む情報ばかりをどんどん書きこむ人もいます。
しかし、フェイスブックの基本は実社会と同じく「人間」です。人間関係ができていないところにいきなり商売の話は進まないものです。社会的に成り立つような人間関係をインターネットの世界でも構築していくことが、フェイスブック活用でもっとも重要な点です。

(2)フェイスブックで利用できるサービス
フェイスブックはまだまだ発展途上でどんどん進化していきます。アプリなどもオープンでいろんなことができます。解説書も間に合わないくらいです。
ですから、複雑でわかりにくいところもあります。あまり細かいことは気にせず「人と交流する」という、基本機能からフェイスブックを使い始めてはどうでしょうか。

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