「現場で撮った大量の写真を、事務所のSSDにバックアップして終わりにしていないでしょうか?」近年、地震や水害などの災害リスクが高まる中、企業にとって「データの保全(BCP対策)」は待ったなしの課題です。もし明日、オフィスが被災してSSDが泥水に浸かってしまったら、お客様の大切な情報は守れるでしょうか?
今回は、能登半島地震を体験した小規模事業者が「ITは苦手だが、災害対策は必須」「スマホもPCも機種がバラバラ」という悩みを抱えて意思決定した経緯を紹介します。数あるクラウドサービスの中からなぜGoogleを選んだのか、その検討プロセスと結論をシェアします。
クラウドストレージを選ぶ理由

なぜ、今「SSD」から「クラウド」なのか?
これまでは外付けSSDやHDDへの保存が一般的でした。しかし、BCP(事業継続計画)の観点では、物理メディアには致命的な弱点があります。
- 破損・紛失リスク: 落下による故障、盗難、そして災害時の消失。
- 場所の制約: そのSSDがある場所(オフィスなど)に行かないとデータが見られない。
クラウドは、インターネット上の堅牢なデータセンターにデータを保管します。オフィスが被災しても、手元のスマホや新しいPCからログインするだけで、すぐに業務を再開できます。
小規模事業者の悩み:どのサービスを選べばいい?
クラウド導入を決めたものの、代表的なサービスはいくつかあり、どれが自社に合うのか迷いました。 当社の環境は以下の通りです。
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データ内容: 現場写真などの画像データが中心。
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使用端末: Androidスマホ、Windows PC、MacBookが混在(将来iPhone導入の可能性もあり)。
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Officeソフト: Microsoft 365(サブスク版)の契約はしていない。
この条件下で、「Microsoft 365 (OneDrive)」「Dropbox」「Google Workspace」の3つを比較検討しました。
比較検討:3大クラウドサービスの検証
候補①:Microsoft 365 (OneDrive)
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特徴: Windowsとの相性が最強。生成AI「Copilot」も話題。
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見送り理由: 当社は現在Office 365を契約しておらず、文書作成よりも「写真管理」がメインです。Windows中心の設計が、Macやスマホでの運用の足かせになる懸念がありました。
候補②:Dropbox
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特徴: データの同期速度が速く、操作がシンプル。
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見送り理由: 性能は素晴らしいのですが、あくまで「ファイル保存」に特化しており、メールやAIなどの付加価値が少なく、コストパフォーマンスの面で決め手に欠けました。
候補③:Google Workspace (Googleドライブ)
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特徴: 検索機能が強力。OSを選ばない。高性能AI「Gemini」が使える。
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判定: 【採用】
結論:なぜ「Google Workspace」がベストだったのか?

最終的にGoogle Workspace(Business Standardプラン)を選んだ決め手は、以下の4点です。特に4点目のAI活用は、今後の業務効率化において大きな魅力でした。
「OSの壁」を最もスムーズに越えられる
これが基本にして最大の理由です。Googleは、Androidでも、Windowsでも、Macでも、そしてiPhoneでも、「全く同じ使い勝手」で使えます。端末がバラバラな当社には最適でした。
画像管理との相性が良い
大量の写真の中から「3年前のあの現場」を探す際、Googleの検索能力は圧倒的です。また、専用ソフトが入っていないPCでも、ブラウザ上で写真や図面をサクサク表示(プレビュー)できるため、確認作業が早くなります。
コスパと容量(2TBの大容量)
「Business Standard」プランなら、1ユーザーあたり2TBの大容量が使えます。Dropboxと同等以上の容量を持ちながら、ビジネスメール(Gmail)やオンライン会議機能までついてくるため、トータルコストで最もお得だと判断しました。
高性能AI「Gemini(ジェミニ)」が使える
Google Workspace環境であれば、セキュリティが担保された状態で高性能な生成AI「Gemini」(Pro版など)を業務に組み込むことができます。 小規模事業者は常に人手不足です。Geminiを使えば、以下のような作業をAIに任せることができます。
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メールのドラフト作成・添削
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長文の資料や議事録の要約
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新しい企画やアイデアの壁打ち相手
単にデータを守るだけでなく、「優秀なアシスタントを一人雇うような感覚」でAIを活用できる点こそ、Googleを選ぶ決定的な後押しとなりました。
導入後の運用ルール:「共有ドライブ」を活用
導入時のポイントは、個人の「マイドライブ」ではなく、「共有ドライブ」を活用することです。
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マイドライブ: 従業員個人の持ち物。
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共有ドライブ: 「会社」の持ち物。
「現場写真」「顧客台帳」などの共有ドライブを作成し、そこに全員がアクセスするようにすれば、誰かのスマホが壊れても、データは会社の中に安全に残ります。
クラウドストレージ:まとめ
クラウド選びで迷っている経営者の方へ。 もし御社が「WindowsもMacもスマホも入り乱れている」「人手が足りず、AIの力も借りたい」という環境なら、迷わずGoogle Workspaceをおすすめします。
「Androidだから、Macだから」という機材の壁を取り払い、災害時でも仕事ができる環境(BCP対策)を作り、さらにAIという武器まで手に入る。これらを月額千円台からの投資で実現できるのは、小規模事業者にとって最強の選択肢と言えるでしょう。

この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
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