2026年10月9日(金)、福井県坂井市丸岡町の福井県産業情報センターで開催された「クマンドウデジタルアライブ2026(通称クマデジ)」で、「生成AIを活用したアプリ作成体験ワークショップ~Googleスプレッドシートと連携して学ぶ、アプリ作成の第一歩~」の講師を担当しました。主催は公益財団法人ふくい産業支援センターです。

ワークショップは午前の部(10:00~12:00)と午後の部(14:00~16:00)の2回、同じ内容で開催しました。この記事では、ワーク体験の様子を午前と午後の部からかいつまんでご紹介します。

事前の告知記事は上記のとおりです。
クマデジ2日目「ビジネスSIDE」の会場は2階クマンドウ・ベース
クマデジは10月8日(木)から10日(土)までの3日間開催されるデジタル関連の総合イベントです。8日と9日は企業経営者やDX担当者向けの「ビジネスSIDE」、最終日の10日は一般の方や親子向けの「おもしろSIDE」という構成になっています。

当日の館内案内板を見ると、同じ2階のクマンドウ・ベース+では、金沢国税局さんによる「税務DXの最前線」や、あんしん村IT支援室さんによる「kintone×AIで残業ゼロ・売上回復を達成、70点で始める現場DXとは」といったセミナーも並んでいました。AIとDXを軸にしたプログラムが一日中続く、まさにビジネス向けの一日です。

私が担当したワークショップの会場は、2階のクマンドウ・ベースです。階段下には案内看板も出してもらっていました。

Geminiにコードを書いてもらい、おみくじアプリを公開しました

ワークショップは講義を聞くだけの座学ではなく、参加者の皆さんがご自身のノートパソコンで手を動かすハンズオン形式です。題材は、これまでの研修でも使っている「おみくじWebアプリ」です。
進め方はシンプルです。
- Googleスプレッドシートを新規作成し、拡張機能からApps Script(GAS)を開く
- 用意したプロンプトをGeminiに貼り付け、コードを省略せず全文で出力してもらう
- 出力されたコードをGASのエディタにそのまま貼り付けて保存する
- 「デプロイ」からウェブアプリとして公開し、発行されたURLを開く
プログラミング未経験の方でも、自分でコードを書く必要はありません。Geminiが書いたコードの全文をコピーして、GASに貼り付けるだけです。ここで大切なのが「全文を出して」と指示することです。生成AIは気を利かせて途中を省略することがあり、そのまま貼り付けても動きません。
Google連携時の警告画面は「Advanced(詳細)」から承認
初めてGASを使う方がほぼ必ずつまずくのが、スプレッドシートとの連携を許可するときに表示される警告画面です。「このアプリはGoogleで確認されていません」という表示が出るため、多くの方がここで手が止まります。
これは自分で作ったばかりのアプリで、Googleの審査を受けていないために出る表示です。画面左下の「Advanced(詳細)」をクリックし、その先のリンクから進んで権限を承認すれば先に進めます。
ただし、何でも機械的に許可してよいわけではありません。プロジェクト名が自分のものか、ログインしているアカウントは正しいか、求められている権限は想定どおりか。この3点を確認してから進む習慣をつけてほしい、とお伝えしました。
スプレッドシートと連携させ、マスターと履歴でデータベースを作りました

おみくじアプリが動いたら、次はスプレッドシートとの連携です。「マスター」シートに運勢の種類や出やすさ(重み)、一言メッセージを持たせ、引いた結果は「履歴」シートに1行ずつ記録していく形に修正しました。
参加者の皆さんがそれぞれ、スプレッドシートのマスターデータと履歴データに連動して動くおみくじアプリを完成させました。これは小さいながらも、立派な「データベースと連動したWebアプリ」です。
マスターを書き換えるだけなら再デプロイは不要
ここで実際に試してもらったのが、マスターシートの書き換えです。たとえば大吉の重みを大きくしたり、一言メッセージを変えたりすると、アプリを再読み込みするだけで表示がすぐに変わります。
一方、コードを修正した場合は再デプロイが必要です。この違いは、今回のワークショップでいちばん持ち帰ってほしいポイントでした。
- データ(マスター)を変えた → 再デプロイは不要。すぐ反映される
- コード(仕組み)を変えた → 再デプロイが必要
業務アプリに置き換えると、商品名や価格、担当者名などをマスターに持たせておけば、日々の変更はスプレッドシートを書き換えるだけで済みます。プログラムに触れる人と、データを更新する人を分けられるのです。運用の負担がぐっと軽くなります。
タイムカード、日報、サイゼリヤガチャへの応用

おみくじは遊びのように見えますが、仕組みは業務アプリそのものです。「名前を入力してボタンを押す→処理する→スプレッドシートに記録する→結果を表示する」という流れは、さまざまな業務に置き換えられます。
- タイムカード:名前と日時を履歴に記録する仕組みは、そのまま出退勤記録になる
- 日報:入力欄を作業内容や所感に変えれば、スマホから送れる日報アプリになる
- サイゼリヤガチャ:メニュー情報を自動で取得し、ランダムに1品を選ぶ。マスターを自動更新する発想の応用例
サイゼリヤガチャの話には会場から笑いも起きましたが、「マスターを人が手入力するのではなく、自動で取ってくる」という考え方は、在庫や価格表の更新にもそのまま使えます。
GASトリガーで定期的に自動実行できる
GASには「トリガー」という機能があり、毎朝8時、毎週月曜日など、決まった時間にプログラムを自動実行できます。データの集計や通知メールの送信などを、人がボタンを押さなくても回せるようになります。ここまでくると、アプリは「使う道具」から「勝手に働いてくれる仕組み」に変わります。
Google AI StudioのAPIキー連携で、低コストに高度なAI分析も
さらに一歩進んだ使い方として、Google AI StudioでAPIキーを発行し、GASからGeminiを呼び出す方法も紹介しました。スプレッドシートに貯めたデータをAIに分析させたり、文章を自動生成させたりできます。
API利用は従量課金ですが、中小企業の業務で使う程度であれば、私の運用経験では月額数百円から千円程度に収まることが多いです。高度なAI分析を、このくらいのコストで自社の仕組みに組み込めるのは大きな魅力です。
参加者と話し合った導入時の課題
ワークショップの後半では、実際に社内へ導入する場合の課題についても意見を出し合いました。主に次の3点が挙がりました。
- 無料版AIの仕様変更リスク:無料版のサービスは、予告なく機能や制限が変わることがあります。業務の要になる部分を無料版だけに依存するのは危険です。
- 機密情報の入力制限:顧客情報やマイナンバーなどの機密情報は、生成AIに入力しないことが大原則です。無料版では入力内容が学習に使われる可能性もあり、何を入れてよいかのルールが欠かせません。
- 社内導入時の合意形成:一人が便利なアプリを作っても、上司や同僚の理解がなければ定着しません。誰が作り、誰が管理し、どこまでを任せるのかを社内で合意しておく必要があります。
どれも技術の問題というより、運用と組織の問題です。生成AIでコードは数分で作れるようになりましたが、「どの業務を、どこまで、誰の確認で任せるのか」を決めるのは人間の仕事です。
じゃんけんで決めたチームリーダーを中心にスモールスタート
なお各チームのリーダーはじゃんけんで決めました。和やかに決まりましたが、こうした「旗振り役」がいるかどうかで、研修開始時の取り組みがうまくいくかどうかどうかが大きく変わります。
リーダーを中心に、次の3点を進めていただく方針としました。
- エラーが出たら画面キャプチャをGeminiに投げる:エラーメッセージを自分で読み解こうとせず、画面ごとGeminiに見せて原因と対処法を聞く。これだけで多くのトラブルは自己解決できます。
- 安全な社内運用ルールを決める:入力してよい情報・いけない情報、公開範囲、管理者などを最初に決めておく。
- 専門家派遣制度を活用して小さく試す:いきなり大きなシステムを作るのではなく、支援機関の専門家派遣制度なども活用しながら、小さな業務アプリの試作から始める。
専門家派遣制度については、当社のページでも仕組みを紹介しています(図は石川県のISICOのものですが、各県の支援機関もほぼ同じ仕組みです)。

完璧より、小さく作って動かすことから

ワークショップを終えて外に出ると、福井県産業情報センターの建物が夕日に染まっていました。
午前・午後の2回とも、参加者の皆さんが熱心に手を動かしてくださいました。2時間前までGASを触ったこともなかった方が、スプレッドシートと連動するWebアプリを自分の手で動かしている。この光景を見るたびに、生成AIが「作れる人」の範囲を大きく広げたことを実感します。
ただし、完成はゴールではありません。小さく作る、実際に使う、直す。この繰り返しが、結局はいちばんの近道です。今回のおみくじアプリが、参加者の皆さんの会社で業務アプリが生まれるきっかけになればうれしいです。
同じ内容で実施した石川県での研修の様子はこちらです。

GASでWebアプリを作る仕組み(HTML Service)については、こちらの記事で解説しています。

ご参加いただいた皆さま、そして開催にご尽力いただいた公益財団法人ふくい産業支援センターの皆さま、本当にありがとうございました。

この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
保有資格:中小企業診断士、情報処理技術者など
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