8月12日、ある企業様の経営計画発表会で、第二部の意見交換会の進行役(ファシリテーター)を務めさせていただきました。
素晴らしい計画が発表された後、その熱量をどうやって実際の現場で「次の一歩」につなげるか。これは多くの中小企業が抱える共通の課題ではないでしょうか。
今回は、計画を”絵に描いた餅”で終わらせず、社員みんなが「自分ごと」として動き出すための会議の進め方について、当日の様子を交えながらご紹介します。
経営計画発表会
一部が経営計画発表会で、二部がグループディスカッション
この日の経営計画発表会は二部制としました。第一部は経営計画発表会とし、全体の計画と各部門からの計画を発表しました。第二部はその発表を受けたあと、小グループに別れてのグループディスカッションで、このグループディスカッションはバズセッション方式としました。
今回の目的:「わかる」を「やる」に変える意見交換会
今回の意見交換会(バズセッション)で目指したのは、主にこの3つです。
- 経営方針の理解を深める:社長の想いを、受け手である社員がしっかり理解する。
- いろんな視点で問いを立てる:部門や立場を超えて「もっと良くするには?」を考える。
- 明日からできることを見つける:具体的なアクションプランまで落とし込む。
実は当日、第一部の発表が大変盛り上がり、第二部の持ち時間が少し短くなるというハプニングが!しかし、そんな状況でも目的を達成するために、いくつかの工夫を凝らして進行しました。
短時間でも議論を深める!バズセッションの進め方
限られた時間で成果を出すために、このような流れで進めました。
ステップ1:感想や疑問を「出し尽くす」時間(ラウンド1) まずは、経営計画を聞いて「感じたこと」「もっと知りたいこと」を、一人ひとり付箋に書き出してもらいます。
- 「昨年の振り返りがしっかりできていて、納得感がありました」
- 「部門間の連携がもっと必要だと感じました」
- 「この売上目標を達成するための、具体的なアクションプランの評価方法が知りたいです」
ここでは「こんなこと聞いてもいいのかな?」という遠慮は一切不要。「とにかく全部出す」ことを大切にします。否定や評価をせず、まずは全員の頭の中にあることをテーブルの上に見える化していくんです。
ステップ2:「じゃあ、どうする?」を具体化する時間(ラウンド2) 出てきた感想や疑問をもとに、今度は「これから30日でやること・できること」を考えていきます。「誰が」「いつまでに」「何を」やるのか、具体的な行動レベルまで落とし込むのがポイントです。
工夫した点:議論をリアルタイムで「見える化」 皆さんが議論している内容を、私はその場でマインドマップに入力し、スクリーンに投影していました。こうすることで、「今、何について話しているのか」「誰の意見がまだ出ていないか」が全員で共有でき、話の脱線を防ぎながら、議論の抜け漏れをなくすことができます。
一番のキーパーソンは「観察に徹する」社長 この間、社長には各グループを自由に見て回っていただきました。ただし、一つだけお願いしたのが「発言は控えて、観察に徹してください」ということ。トップが口を出すと、どうしても現場の自由な意見が出にくくなってしまうことがあります。社員の皆さんの本音やリアルな反応を感じていただく、大切な時間です。
バズセッションで見えてきた素晴らしい効果
今回の取り組みで、たくさんの良い変化が生まれました。
- 視点が揃った:「うちの部署だけじゃなく、会社全体で考えるべき課題が見えた」という声が聞かれ、部門を超えた一体感が生まれました。
- 問いの質が上がった:漠然とした不安が、「この数字の根拠は?」「判断基準はどうなっている?」といった具体的な問いに変わりました。
- 納得感とスピードが両立した:マインドマップで議論が見える化されたことで、全員が話の流れを理解し、短時間で深い合意形成ができました。
- 「明日やること」が明確になった:アクションプランが具体的になり、「さて、明日から何をしようか」と迷うことがなくなりました。
特に印象的だったのは、社長が観察に徹してくださったことで、現場の皆さんが安心して率直な意見を交わしていたことです。これが「心理的安全性」の高い場の力なのだと、私自身も改めて感じました。
中小企業だからこそできる!現場が主役の経営計画
経営計画は、立派な資料を作って発表すれば終わりではありません。今回の事例から、現場の行動につなげるために大切な3つのヒントが見えてきました。
- 全員が発言できる場を設計する:付箋を使ったり、発言時間を区切ったりして、特定の人だけが話す状況をなくしましょう。
- トップは聞き役に徹する時間を作る:社長や役員は、まず現場の声を聞き切る。最後のまとめで方向性を示すだけで、議論の質は大きく変わります。
- やりっぱなしにしない:今回も1ヶ月以内に課題解決会議を開き、出てきた課題を行動計画に落とし込んで実行することが決まりました。この継続が何より重要です。
今回のバズセッションは、計画が変更になる中でも、参加者の皆さんの力で素晴らしい成果を生むことができました。
経営計画を「伝える」だけでなく、社員みんなで「作り直す」プロセスにすることで、会社はもっと強くなります。付箋とマーカー、そして少しの工夫で始められますので、ぜひ次の会議から試してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
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