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法務省が2026年8月7日、生成AIによる「声の無断利用」について民事責任の解釈指針を公表しました。
本記事では、指針が示した侵害判断の物差し、国内で実際に起きた訴訟やサービス終了の事例、自社の声を守る防衛策、そして声を収益資産に変える「攻め」の選択肢まで、出典を明示しながら整理します。

法務省が明示した「声の権利」とは?指針公表の背景とニュースの要点
生成AIの技術革新によって、誰でも手軽に高品質な音声合成やナレーションを作成できるようになりました。一方で、声優やタレント、アナウンサーなどの声が無断でAIに学習され、模倣された音声がインターネット上で配信される問題が相次いでいます。こうした事態を受け、法務省は民事責任における「声の法的保護」に関する解釈指針を公式サイトで公表しました。

正確な出典を押さえておきましょう。今回の文書は「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」(座長・田村善之東京大学大学院教授)が令和8年8月にまとめた取りまとめ報告書で、副題は「生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針」です。検討会は2026年4月24日の第1回から7月27日の第5回まで、約3か月で5回開かれ、声優へのヒアリングも実施したうえで整理されました。報告書本体は法務省サイトからPDFで無料公開されています。
注目すべきは、これまで違法性の線引きが曖昧だった「人の声」について、既存の法律や判例の考え方を当てはめ、明確な保護の対象になると整理された点です。生成AIを提供する事業者だけでなく、それを利用してコンテンツを作成・配信する企業にとっても、コンプライアンス上の大きな節目となっています。
なぜ今「声」の法的な線引きが必要になったのか
近年、既存の楽曲のボーカルを別の著名人の声に差し替える「AIカバー」や、アニメキャラクター・有名アナウンサーの声質を再現したAIナレーションがSNSや動画共有サイトで急増しています。これらは個人のファン活動の枠を超え、商用利用やSNSの集客コンテンツとして悪用されるケースも目立ち始めていました。
被害の規模は数字にも表れています。大手芸能事務所などでつくるNPO法人「肖像パブリシティ権擁護監視機構(JAPRO)」が2026年6月25日に公表した実態調査によると、芸能人の肖像や声優の声を無断で生成したとみられる画像・動画は、2025年6月からの約2か月間だけで延べ4万3483件。SNSでの閲覧数は合計約3億3500万回に達し、権利者が受ける経済的損失は約20億〜45億円と試算されました。調査担当者は、声は同一かどうかの判別が難しく、把握できた被害は氷山の一角にすぎないと指摘しています。
象徴的なのが、声優の津田健次郎さんが起こした訴訟です。
報道によれば、TikTok上の匿名アカウントが2024年7月から2025年9月にかけて、生成AIで津田さんの声を模倣したナレーション付き動画を180本以上公開。当時のフォロワーは21万人超、平均再生回数は147万回に上ったとされます。津田さん側は2025年6月にまず発信者情報開示を申し立てましたが、プロバイダの接続記録の保存期間が過ぎており投稿者を特定できず、2025年11月に運営会社を相手取り動画削除を求めて東京地裁に提訴しました。
一方の運営会社側は「普遍的な男性の声」であり声自体で閲覧者を集めているわけではないと反論しています。声の無断利用が正面から争われる訴訟としては、国内でほぼ前例がないとみられています。
事業活動として動画制作やSNS発信を行う企業は、「ネット上にある声だから使っても大丈夫」という安易な認識を即座に改める必要があります。
判例の考え方を踏まえた「声の法的保護」の整理
人の容姿や名前については、肖像権やパブリシティ権(顧客吸引力を排他的に利用する権利)として最高裁判例でも法的保護が認められてきました。
土台となるのは、パブリシティ権について最高裁が初めて正面から判断したピンク・レディー事件判決(最判平成24年2月2日)です。同判決は、氏名・肖像などを「個人の人格の象徴」と位置づけ、人格権に由来するものとしてみだりに利用されない権利を認めました。
今回の指針は、この判決文にある「氏名、肖像等」の「等」に声が含まれると整理しました。根拠のひとつが同判決の調査官解説で、そこにはサイン、署名、声、ペンネーム、芸名などが人物識別情報として例示されています。検討会でも、声は人物を見分ける情報であり、かつ人格の象徴であることから、保護対象に含まれることに異論はなかったとされています。
押さえておきたいのは、声に関して守られる権利が二階建てになっている点です。
ひとつは商業的価値を守るパブリシティ権、もうひとつは精神的価値を守る「声をみだりに利用されない権利」です。
前者は損害賠償の中心が使用料相当額などの財産的損害、後者は慰謝料が中心となり、両者が同時に成立する場合もあると整理されています。指針は具体例として、声優に似せた声でわいせつな文章を読み上げる音源の公開は後者の侵害にあたり、損害賠償請求などの対象になり得ると明示しました。
侵害かどうかを決める「3類型」──中小企業が覚えるべき唯一の物差し
「どこからがアウトなのか」を判断する物差しは、実はひとつしかありません。ピンク・レディー事件判決が示した「専ら顧客吸引力の利用を目的とするか」という基準であり、その典型例が次の3類型です。指針は、声についてもこの枠組みがそのまま当てはまるとしています。
第1類型は、声それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使う場合。
第2類型は、商品やサービスを差別化する目的で声を付す場合。
第3類型は、声を商品等の広告として使う場合です。
この3つに当てはまらなくても、これらに準ずる程度に顧客吸引力の利用を目的
としていれば「など」に含まれ、侵害となり得ます。
指針が挙げた声の該当例は、実務感覚に直結します。有名人のボイスメッセージやボイススタンプ、オーディオブック、AIカバー、ナレーション、声が再生される目覚まし時計、カーナビゲーション、スマートスピーカー、そして広告のナレーション。中小企業のPR動画のナレーションは、まさに第3類型のど真ん中です。
逆に、覚えておくと安心な例外もあります。物まねや声まねは、芸をする本人の氏名や芸名を明示して行われるのが通常であるため、原則としてパブリシティ権侵害にはならないと整理されました。
ただし、自分の名前を伏せて本人と誤解される形で使えば侵害となる余地があるとされており、「誰の声として受け取られるか」が分かれ目になります。
「うちは有名人じゃないから無関係」が通用しない理由
多くの経営者が誤解しているのが、顧客吸引力は全国区の有名人だけのものだという思い込みです。指針は明確に、本人が著名・有名であることは顧客吸引力が認められるための必須条件ではないと整理しています。特定の分野や一部の地域における顧客層に対して商品の販売を促進する効力があれば足りる、という考え方です。
裁判例でも、海外のフィットネスプログラムの認定トレーナーについて、日本国内の愛好家層の間で一定の顧客吸引力を有していたと判断した事例があります(大阪高判平成29年11月16日)。つまり、地域で名の知られた社長、業界紙に登場する技術者、ファンのついた店主なども、顧客吸引力を持つと評価される可能性があるということです。
これは中小企業にとって二重の意味を持ちます。他社の「地域の顔」を無断で使えば加害者になり得る一方、自社の代表や職人の声が無断で使われれば、権利を主張できる側にもなり得るということです。
中小企業がやってしまいがちな「危険なAI音声活用」3つのパターン

実務の現場では、違法性の認識がないままグレーあるいはアウトな方法でAI音声を使ってしまっているケースが少なくありません。ここでは、中小企業のPR活動や動画制作で特に起きやすい危険な活用パターンを取り上げます。
知らなかったでは済まされない損害賠償トラブルや、自社の信頼失墜に直結する事例を把握し、自社の運用に当てはまっていないか確認してください。
著名人やアナウンサー風の声を無断でAI学習・生成して動画PRに使う
「親しみやすいプロのナレーションに似せたい」という理由から、有名アナウンサーや声優の過去動画から音声を抽出してAIに学習させ、自社の製品紹介動画のナレーションを作成するような行為は完全にNGです。これはパブリシティ権や人格権を明確に侵害する行為となります。
たとえ「〇〇風のAIボイス」と注釈をつけていたとしても、本人の顧客吸引力や声の価値を無断で商業利用している点に変わりはありません。前述の第3類型(広告としての使用)に直撃するパターンであり、指針でも権利侵害の可能性が指摘されている典型例ですので、絶対に行わないでください。
なお指針は、生成AIサービスを提供する事業者側の責任にも踏み込んでいます。特定の声優などの声を作成できることを「セールスポイント」として有償でサービス提供した場合、事業者自身がパブリシティ権侵害と評価される可能性があるとされました。
ツールを選ぶ側としても、「あの声が出せます」を売りにしているサービスは避けるべきだという判断材料になります。
フリー素材と勘違いして商用利用不可の音声やAIカバー音源を二次利用する
YouTubeやTikTokなどのSNS上に投稿されている「AIフリー素材」や「フリー音源」と表記された動画・音声データを、利用規約を細かく確認せずに自社動画のBGMやナレーションとして採用してしまうケースです。
投稿者が勝手に「フリー」と称しているだけで、実際には元の声優や歌手の権利を侵害した違法コンテンツである場合があります。
権利侵害で作られたAI音源を二次利用した場合、利用した企業側も二次的な権利侵害を問われるリスクがあります。出典が不明確な音声データや、著作権・隣接権の処理が怪しいコンテンツは、社内の制作過程から排除するルール徹底が必要です。
判断に迷ったら、「この音声の元になった人物に、対価が支払われる仕組みがあるか」を確認するのが最も実務的です。仕組みの説明がどこにも見当たらないサービスや素材は、その時点で候補から外す。これだけで、後述する事業継続リスクの大半を回避できます。
外部委託先が作成した動画内に権利未確認のAI音声が紛れ込む
自社で直接AI音声を操作していなくても、Web制作会社やフリーランスの動画クリエイターに外注した際、納品物に権利未確認のAI音声が含まれているリスクがあります。
委託先が作業効率化のために無断生成されたAIボイスを使用していた場合、トラブルの矢面に立つのは発注元である自社です。
外部へ動画発注を行う際は、発注契約書や業務委託契約の中で「使用するAI音声を生成・使用するにあたり、第三者の権利を侵害していないこと」を保証させる条項(表明保証条項)を盛り込むなど、契約上の防衛線を張っておくことが不可欠です。あわせて、使用したツール名とプラン名、生成日、商用利用可否の根拠となる規約の該当箇所を納品書に併記させると、後日の検証が一気に楽になります。
「収益化していないから大丈夫」も通用しない
「広告収入を得ていないから問題ない」という理解も危険です。指針は、収益を得る目的がない場合の想定事例まで用意したうえで、収益目的でなくても、もっぱら声の顧客吸引力を利用して閲覧数を獲得し、権利者に営業上の不利益を与えれば、パブリシティ権侵害の可能性があると整理しています。採用広報用のSNS投稿や社内向けのつもりで公開した動画も、対象外ではありません。
金額感も押さえておきましょう。パブリシティ権侵害の損害賠償は使用料相当額を基礎に算定される例が多く、近時の裁判例では、無断使用が19日間という短期間の事案で約47万5000円、店頭モニターで無断放映された動画について1動画あたり100万円といった認定があります。
加えて、削除や販売差止め、データの廃棄まで請求され得ます。指針は、投稿されたコンテンツの削除請求は投稿者本人だけでなく、プラットフォーム事業者に対しても可能だと整理しました。数万円のナレーション費用を惜しんだ結果、百万円単位の賠償と公開停止を招く構図です。
逆に「自社の声やブランド」をどう守るか?社内防衛策のポイント

AI音声のリスクは、自社が加害者になるケースだけではありません。社長や役員、社員の画像・音声がインターネット上から収集され、無断でAI生成される被害、すなわち自社が「被害者」になるリスクも急速に高まっています。
自社のブランドイメージを守り、役員や従業員を犯罪や悪用から保護するための社内防衛策についても、経営陣は早急に検討を始める必要があります。
役員・社員の音声データや動画コンテンツの無断利用対策
会社の公式YouTubeチャンネル、ウェビナーの録画、社長のインタビュー動画などは、悪意のある第三者にとって格好の「AI学習用音声データ」になり得ます。高精度な音声合成ツールを使えば、数分間のクリアな話し声データがあるだけで、本人の声そっくりの偽音声を簡単に作成できてしまうからです。
防衛策としては、自社コンテンツの利用規約において「当サイトおよび公式SNS上の音声・動画データを生成AIの学習用として無断利用することを禁止する」旨を明確に規定しておくことが有効です。また、過度に長時間の無編集な音声・動画を誰でもダウンロードできる状態で放置しない配慮も求められます。
自社の設備が悪用される可能性も想定しておきたいところです。2026年8月4日、西日本鉄道の西鉄福岡(天神)駅と薬院駅で、駅構内の放送設備から同社が意図しない音声が流れる事案が発生しました。
同社は原因不明としつつ第三者が不正な手段で音声を流した可能性があるとして警察に相談しており、SNS上では有名YouTuberに似た声の音声が拡散。当の本人も自分の声だと認めたうえで関与を否定するという事態になっています。館内放送、店内BGM、電話の自動音声など、音声を流す設備を持つ企業にとっては他人事ではない事例です。
ディープフェイクや成りすまし詐欺への備え
社長や財務担当者の声をAIで精巧に模倣し、電話や音声メッセージで「至急指定口座に振り込んでほしい」と指示を出すディープフェイクを利用した新手の詐欺手法が世界中で報告されています。これは中小企業にとっても決して他人事ではありません。
代表例が2024年2月に香港警察が公表した事案です。多国籍企業の財務担当者が、AIで合成された本社CFOや同僚が参加するビデオ会議に騙され、約38億円を送金してしまいました。恐ろしいのは学習元です。報道によれば、そのCFOが会社のプロモーションとして他のスタッフとともに制作しYouTubeで公開していた対談番組の映像から、顔と声が学習されたとみられています。広報のために公開したコンテンツが、そのまま攻撃の材料になったわけです。
社内における資金移動や重要取引の承認プロセスについては、「電話の声や音声メッセージだけでは確定せず、必ず指定の社内チャットや二重の人間確認を行う」という物理的な運用ルールを定めておくことが、なりすまし犯罪に対する強力な防御策となります。声は本人確認の決定打にならない、という前提で承認フローを設計し直してください。
また、自社の名前や役員の名前を騙ったインターネット上の不審な情報や偽サイト、AI要約の悪用による検索汚染の被害についても日常的に監視しておくことが重要です。
詐欺手口やネット上の防衛策については、次の記事で解説しています。

声は「守る」だけではない──AI時代に生まれた「声の正規ライセンス市場」という機会

ここまではリスクの話が中心でしたが、経営者として見るべきは反対側の面です。声に法的な輪郭が与えられたということは、声が取引可能な資産として扱える環境が整いつつあるということでもあります。無断利用が違法だと確認されて最も得をするのは、正規の許諾を取って使う企業と、正規に声を貸す個人です。
市場は年20%超で拡大、コストは「収録」から「テキスト」へ
調査会社の推計によれば、AI生成ナレーション市場は2025年の18億9000万ドルから2026年に23億1000万ドルへ、年平均22.2%で成長し、2030年には50億8000万ドル規模に達すると見込まれています。伸びの背景にあるのは、eラーニングの拡大、多言語コンテンツの必要性、制作コストの最適化といった、まさに中小企業が抱える課題そのものです。
従来のナレーション制作は、ナレーターの手配、スタジオ収録、音声編集がセットでした。AI音声を使えば、原稿テキストを直せば音声が作り直せます。価格改定や仕様変更のたびに再収録していた説明動画が、テキスト修正だけで更新できる。この「更新コストがほぼゼロになる」効果は、商品数が多い企業ほど大きく効きます。
声で稼ぐ側に回る──正規プラットフォームの実例
「声を貸して対価を得る」仕組みは、すでに国内で動き始めています。AI音声プラットフォームのCoeFontは、最短5分程度の収録で自分の声を登録でき、他のユーザーに利用されると利用料の一部が提供者に還元される仕組みを運営しています。同社の発表によれば、累計3300名以上に収益を還元し、なかには100万円を超える収益を得た提供者もいるとしています。
以前、私もCoeFontを使って音声を作成したことがあります。その記事はこちらです。

企業向けにより本格的なのが、NTT西日本が2025年10月27日に開始した音声AI事業「VOICENCE」です。実演家から提供された音源、そこから学習したAI音声モデル、生成されたコンテンツまでを「音声IP」として保管・管理し、独自のトラスト技術でライツマネジメントを行うという設計になっています。開始時は俳優の別所哲也さん、声優の花江夏樹さん・春日望さん、バーチャルタレントのKizunaAIが参加し、2026年5月には金田朋子さんら声優5名が新たに加わりました。同社が用途として掲げているのが、企業のブランディングやプロモーション、観光向けディスティネーションコンテンツ、海外ファン向け多言語配信です。観光や地域産品を扱う中小企業にとって、そのまま使える文脈だといえます。

個人が自分の声を作品にした例もあります。声優の梶裕貴さんは2024年、自身の声を学習させた公式AIキャラクターを軸としたプロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングによる音声合成ソフト制作、チャットアプリ、コミカライズ、コラボカフェへと展開しました。無断利用への脅威とは別に、音声合成を使った新しいエンタメを作りたいという創作意欲が出発点だったと語られています。守るための規制ではなく、稼ぐための土台として声を扱う発想です。
中小企業の実利は「多言語化」と「内製化」にある
では、地方の中小企業が現実に取り組める用途は何か。整理すると3つに集約されます。
ひとつ目は多言語化です。声質を保ったまま外国語に変換できるサービスも登場しており、インバウンド向けの施設案内、製品の取扱説明、工場見学の解説などを、追加収録なしで英語・中国語版に展開できます。ふたつ目は社内向けコンテンツの内製化。作業手順書、安全教育、新人研修の動画ナレーションは外注する予算が取りにくい領域ですが、AI音声なら担当者が原稿を書いた当日に完成します。3つ目は電話自動応答や館内アナウンスといった定型音声で、実際にコンサートホールの場内アナウンスにAI音声を導入した事例も出ています。
いずれも派手さはありませんが、外注費と待ち時間を確実に削る領域です。「AIで面白い動画を作る」より先に、「毎年撮り直していたものを撮り直さなくて済むようにする」ほうが、投資回収は圧倒的に早くなります。
現場で迷わない!中小企業のための安全な「AI音声活用ガイドライン」

ここまでリスクや防衛策、機会を整理してきましたが、重要なのはコンプライアンスを守った安全な運用フローを構築することです。担当者が判断に迷わないよう、社内で共有できる形にしておきましょう。
現場の担当者が迷わずに業務でAI音声を活用できるよう、中小企業が取るべき具体策を整理しました。
商用利用可能な正規ライセンスツールを選ぶ
最も確実な方法は、商用利用が明確に許可されており、権利処理が完了しているAI音声・ナレーション生成サービスを契約して利用することです。大手クラウドサービスや信頼できる専門ベンダーが提供するツールは、契約している声優との間で適切な権利処理が行われています。
ツールを選定する際は、単に「商用利用可」と書かれているかだけでなく、次の点を利用規約で確認したうえで、社内の推奨ツールとして指定しましょう。生成した音声の権利帰属、商用利用時のクレジット表記の要否、広告やYouTube収益化動画への適用範囲、有料プランの文字数上限と超過料金、そして声の提供者に対価が還元される仕組みの有無です。学習データの出所について説明があるかどうかも、重要な判断材料になります。
「法的にセーフ」でも消えないリスク──にじボイス終了が示したこと
見落とされがちなのが、法的な適法性とは別に存在する事業継続リスクです。DMMグループのAlgomaticが提供していたAI音声生成サービス「にじボイス」は、日本俳優連合から「キャラクターボイスが組合員の声に酷似している」として33体、さらに20体の削除要請を受け、2025年11月21日にサービス全体の終了を発表、2026年2月4日に提供を終えました。
注目すべきは、同社が社内の再調査の結果として「法的な権利侵害は確認されなかった」との認識を示したうえで、それでも終了を選んだという点です。実演家や関係団体に懸念を生じさせることは本意ではない、という判断でした。
ここから中小企業が学ぶべき教訓は明快です。声の領域では、法的なアウト判定より先に不信や取引停止が来る。そして自社が使っていたツールが突然使えなくなったとき、困るのは利用者側です。
対策はシンプルで、生成した音声ファイルだけでなく原稿テキストを必ず社内資産として保管し、別ツールでも作り直せる状態にしておくこと。特定サービスに依存しない体制が、そのまま事業リスクの分散になります。
社員の同意を得て「自社専用AI音声」を作る(生データの資産化)
さらに一歩進んだ安全かつ効果的な手法として、自社の社員や役員、専任ナレーターの協力を得て、適切な同意契約のもとで「自社専用のカスタムAI音声モデル」を構築することが挙げられます。本人の明確な合意のもとで収録した音声データであれば、権利侵害のリスクは存在しません。
ただし「口頭で了解を取った」だけでは不十分です。同意書には少なくとも、利用目的と範囲(広告可否・二次利用可否)、利用期間、退職後や契約終了後の取扱い、モデルとデータの削除請求権、対価の有無と算定方法の5点を明記してください。とくに退職後の扱いを決めていない事例が多く、後々のトラブルの温床になります。
自社独自の声を持つことは、他社との差別化につながるだけでなく、社内のマニュアル動画作成や広報コンテンツの量産を極めてスムーズにします。自社が所有する独自の一次データや声をデジタル資産として構造化・蓄積していくプロセスは、AI時代における企業の競争力の源泉となります。
自社データを安全に資産化する考え方は、こちらの記事をご参照ください。

公開前に確認したい8項目チェックリスト
最後に、動画やSNS投稿を公開する前の確認項目をまとめます。担当者のチェックシートとしてそのままお使いください。
第一に、使った音声は誰の声か説明できるか。
第二に、そのツールの利用規約で商用利用が明示されているか。
第三に、声の提供者に対価が還元される仕組みがあるか。
第四に、特定の有名人の声を「出せます」と売りにしたサービスではないか。
第五に、外注品の場合、表明保証条項を契約書に入れているか。
第六に、原稿テキストを社内に保管し別ツールで再生成できるか。
第七に、AI音声を使用している旨を視聴者に開示すべき場面ではないか。
第八に、自社の公式動画が長時間・無編集のままダウンロード可能な状態になっていないか。
このうち第一と第二だけでも運用に組み込めば、事故の大半は防げます。
まとめ:AI技術の進化に合わせてコンプライアンス意識をアップデートしよう
法務省による解釈指針の公表は、生成AIにおける「声の利用」が法律の枠組みの中で厳格に判断されるフェーズに入ったことを示しています。中小企業がPRやSNS運用、業務効率化でAI音声を取り入れる際は、「技術的にできること」と「法的に許されること」を明確に区別しなければなりません。
同時に見落としてはならないのが、ルールが定まることは市場が立ち上がる前提条件でもあるという点です。無断利用が違法だと確認された瞬間から、正規に許諾された声には価格がつき、正しく使う企業が有利になります。年20%を超えて伸びる市場に対して、リスクを恐れて何もしないという選択は、それ自体が機会損失です。
権利未確認の音声利用や無断模倣といった目先のリスクを回避しつつ、正規ライセンスツールの導入や自社生データの活用といった安全なルートを選択することが、結果として自社のブランドと信頼を守る最善の道です。まずは自社の公式動画で使っている音声の出所を棚卸しするところから始めてみてください。
AIツールの進化に合わせて社内のコンプライアンス意識と運用ルールを定期的に見直し、リスクのない健全なデジタル活用を進めていきましょう。守りを固めたうえで、声という資産をどう活かすか。そこまで踏み込んだ企業が、次の数年で差をつけていくはずです。
どもどもAIとは

この記事は「どもどもAI」というAIエージェントで執筆しています。【使用モデル: gemini-3.6-flash(無料版)→ClaudOpus5でリライト】
今回のどもどもAIはGASアプリ上のAIエージェントが最新情報を収集し、調査と整理を行い、ブログ記事のたたき台を作成。その後、遠田幹雄本人が目視で文章をチェックしてから公開しています。
現在は実験的な運用段階にあり、より精度の高い情報発信を目指して改善を続けています。どもどもAIは、これからも経営に役立つ視点を整理してお届けします。

この記事を書いた遠田幹雄は中小企業診断士です
遠田幹雄は経営コンサルティング企業の株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役。石川県かほく市に本社があり金沢市を中心とした北陸三県を主な活動エリアとする経営コンサルタントです。
小規模事業者や中小企業を対象として、経営戦略立案とその後の実行支援、商品開発、販路拡大、マーケティング、ブランド構築等に係る総合的なコンサルティング活動を展開しています。実際にはWEBマーケティングやIT系のご依頼が多いです。
民民での直接契約を中心としていますが、商工三団体などの支援機関が主催するセミナー講師を年間数十回担当したり、支援機関の専門家派遣や中小企業基盤整備機構の経営窓口相談に対応したりもしています。
保有資格:中小企業診断士、情報処理技術者など
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